今日は最近よく言われる「日本の住宅事情は欧米に比べて貧しい」
「欧米では中古市場が活発で家は安く買えるのに日本では家が高いから家を買えばローンで大変」などの、
価格を含めた住宅事情は欧米が豊かで日本は貧しいという概念は実際本当なのか、データがありましたので比較してみました。

結果は、驚くべきものでした。

では、データを基にして進めて行きます。

まず、人口一万人あたりの住宅着工件数です。

人口一万人あたりの住宅着工件数

これで見ると、直近の2014年は日本が一番多いです。
二番目にフランス、アメリカとドイツが続いています。
また、2007年頃まではスペインが住宅バブルでダントツでした。

これは、個人的には予想通りです。
日本は新築信仰とか、中古市場がしっかりしていない、とか言われていますので。。。

次に一万人あたりの住宅着工件数の2002年から2014年の平均値と年によってのブレの大きさを示す標準偏差です。

住宅着工戸数の平均値と標準偏差

こうしてみるとイギリスやドイツは着工件数もブレも低いです。
また、欧州の数カ国は日本より着工件数が多く、またフランスやポルトガルなども日本と近い数字です。

次に、一番知りたい情報かも知れない、価格の動向を見てみましょう。

価格の動向

2002年比での2014年の住宅価格は驚きです。
イギリスとフランスで約2倍、アメリカで1.4倍、ドイツで1.2倍です。日本は0.8倍以下で住宅価格は下がっています。
単純に家を買ったり建てるお客さまからしたら、同品質であれば価格が安い事に越したことはありません。

しかも、イギリスなどは新築の着工件数を制限されているそうで、
新築の着工件数も少ない上に中古価格が上昇では「もっと新築を建てろ」と家を建築希望のお客さまの不満もたまりそうです。

また、「欧米は資産価値がある中古住宅市場が発達しているから安くて優良な住宅が多く流通している」
という概念も誤りかもしれません。
どんどん値上がりして高くて古い中古住宅ばかり供給されている市場よりは、新築の着工がそれなりにあるので供給があり、
価格もおさえられて、安定供給できているので安く新築を買う、建てるほうがいいというのは自然な思いです。

次は各国の住宅ローン残高です。

住宅ローン残高

これも2002年と2014年との比較ですが、堅実な国民性からか、日本とドイツだけほぼ横ばいです。
各国との比較で言うと、「家を買うとローンだけ残る」とか「日本は収入に占めるローン比率が高い」
と言われることがありますが、事実は違うようで、近年は特に欧米の人の方がよほど住宅ローンを多く借りています。

ここまでくるとなんだか今までの概念が何だったのかと感じる方もいるかもしれませんね。

最後に、空き家に関する比較です。

日米の賃貸と持ち家の空き家比率

これを見ると実は空き家率は持ち家の場合はアメリカの半分しかなく、賃貸は3倍近くあります。
その事実からすると、空き家問題はこれから持ち家にも波及する可能性も十分あるとはいえ、
現状は「貸せていない貸家をどうするのか」という、賃貸物件問題ともいえる状況が見えてきます。

以上の日本と欧米との比較は、「新設住宅着工件数は多いが多すぎではない」
「住宅価格は欧米と比較してきわめて安定していてかつ低い」「住宅の需要と供給は安定している」
「住宅ローン残高は近年は欧米と比較してきわめて少額」「賃貸の空き家率はアメリカと比較してきわめて高い」
という、賃貸物件の空き家問題を除けば、実はこの15年間の日本の住宅政策は欧米と比較してきわめて安定的
に推移している、という結論が見えてきたという印象です。

日本って、この住宅事情の比較で見るととても堅実でいい国なんですね。

※上記データは全て住宅金融支援機構「欧米との比較における日本の住宅市場の特徴」
http://www.jhf.go.jp/files/300249967.pdf　から引用